おまえの覚悟を見せてみろ

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おまえの覚悟を見せてみろ

 言葉とは裏腹に、少年は海賊の言葉を真剣に受け止めていた。だが、何もなかった。怒りはない。静かな絶望があるだけだ。それは長い時間かけて培った、鎧のようなものかもしれない。そうだとしても、鎧を脱いで裸になれる気はしなかった。 「そういうことは、今の仕事が済んでから考えるさ。それより、どうやって戦う。そっちが重要だ」 「まず、奴らはプレートアーマーで武装している。鉄の鎧だ。だから、おまえの弓は通じない。マヤの戦士の武器はまず通用しない。銃を使えば倒せるが、おまえは使ったことなどないだろう。だから、別な戦い方を教える」  女海賊はそう言ってニヤリと笑った。 「プレートアーマーにはいくつか急所がある。まずここだ」  いきなり、少年の股間をつかんだ。 「な! な、何を……」 「脚部装甲の付け根の部分だな。しかし、ここを狙うのは難しい」 「そりゃそうだろう。火を噴く棒と鉄の剣を持ってるんだろう?」 「だから、ここを狙え。胴体側面、脇の下の急所だ。ここも装甲の隙間がある」 「簡単そうに言うな」 「これを貸してやる。『鎧通し』って名前がついてる。まあ、武器じゃなくて職人の道具なんだがな」  それは掌に隠れるほどの刃渡りの、奇妙な短剣だった。真上から見ると刃が十の字の形をしている。細長い三角形の刃が二枚直交しているのだ。切るのには使いようがない、武器だというなら刺突専門の武器だった。それも、極至近距離でしか用をなさない。 「これだけを持って敵に立ち向かえ。必ず油断する。隙ができる。やってみればわかる。あとは、オセロット、お前次第だ」 「オセロトルな、名前憶えろ」 「おまえが前に出て暴れる。我々は回り込んで攪乱する。乱れ切ったところで一気に殲滅する。なに、守備に残ってる兵隊の数はたいしたことはない。あたしたちとおまえならできる。覚悟はあるか」 「俺は戦士だ」 「虐殺者になる覚悟はあるか」  少年は無言で頷いた。 「ならばよし。お前の覚悟を見せてみろ」
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