5・新事実

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 祥子が救急車で運ばれてから20分以上が経過していた。その時は既に心肺停止の状態だった。  慌ただしく職員が走り回る署内でポツンと取り残されたように、その光景を呆然と見ている絵里奈と健也がいた。  何機か電話が鳴っている。その一機の受話器を手に取った職員が、 「容疑者、佐藤祥子、21時13分、死亡確認です」  と周囲を見ながら声を上げた。署内にどよめきの声が響いた。 「死因は急性心不全と見られています」  その頃、別のフロアにある取調室に一人残された相川は立ち上がりソワソワとしていた。警官は鍵を閉めて出て行ってしまったからだ。ただ、祥子が倒れたというような声は聞こえた。 「おい、何だ・・・! 次は俺が殺されるのか・・・! 冗談じゃねぇ」  ブツブツと独り言を言いながら室内をうろついていた。 「エリン、聞いた? 死亡って言ったよね?!」 「どういうこと? 自殺したの?!」  絵里奈はこれで結衣の居場所が分からなくなってしまう不安に襲われていた。迷宮入りをしてしまうのだろうかと気が変になりそうだった。 「たまったもんじゃないわ! 居場所も言わず逃げたの?!」  そしてこれまでに体験したこともない怒りが込み上げて来た。 「署長さんが戻って来るのを待とう・・・!」  と健也が言った時、スマートフォンが鳴った。 「健ちゃん、電話! カズ君かも!」  慌てて表示を見ると、やはり和彦だった。 「もしもしカズ君、何かあった・・・?!」  口を開いて健也を見る絵里奈。何の知らせだろうか、最悪の結果を嫌でも想像してしまう。不安はピークに達した。 「何だってぇ?!」大声を上げる健也。 「どうしたの?! 何よ、健ちゃん!!」  目を見開いた健也が電話から耳を離し、 「結衣が家に・・・帰って来た・・・って・・・」  一言呟いた。
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