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思い
悠二がアルバイトを辞めてから火曜日も金曜日も家にいる事が基起を安心させた。
自分が単なる居候としてしか思われていなくても、悠二が寂しさで誰かに身を委ねている事がないというのが嬉しい。
「多分お前のおかげだよな」
モモ太に話しかけるとみゃ〜と答えたのが『そうだ』と言っているようで
「お前に嫉妬しそうだよ」とぼそりと呟いた。
悠二は夕食の準備をしながら、基起が出て行ったと思ったあの日、あんなに心が乱れるとは思わなかった。
誰にも依存しない、もちろん誰かを好きになったりしないと心に言い聞かせてきた。
だから、身体だけつかの間に誰かと繋がれればそれでいいと思っていたが、そんな時間よりもモモ太とこの家でいる方が楽しくなった。
モモ太と俺と・・・あいつがいれば
悠二が夕食を作っている間、基起はモモ太のご飯の支度をする。
「そろそろモモ太のご飯にそのままのカリカリを混ぜてみる?」
「え?」
「今までカリカリをふやかして食べさせていたけど、少しずつ固いままにしていかないといけないから、半分ふやかして半分はカリカリのままにした方がいいかと思って」
「そうだよね、じゃあそうしよう」
基起が言ってくれなかったら、こんな事も気がつかない自分が情けないが、生活の中で基起の存在が大きくなっていく事が怖く感じることがある。
こいつはいつか出て行く、彼女が出来ればこともなげにキャリーバッグ一つ持って、ここに来たときのように誰かのところに住みつくんだろう。
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