雨が降る夜

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雨が降る夜

百田悠二(ももたゆうじ)は祖母が残してくれた1DKが12戸ある築50年のアパートを所持し、さらに2階建ての古い戸建てに住んでいる。 火曜日と金曜日の夜の週2日ほどアルバイトをしていて、アルバイトが終わるのが基本は深夜0時だが時にはすこし遅くなることもある。 朝から降っていた雨はザーザーと深夜まで続き、ビニール傘には激しく雨粒が当たりパタパタという騒騒しい音に混ざりニャ~という猫の小さな声がする。 こんな雨の中、屋根の無いところならきっと寒いだろうが、猫なら雨がしのげるいいところを見つけられるのでは無いかと思いそれほど気にしなかった。 ところが、その猫が居たのは自宅の門の前でご丁寧に段ボール箱らしき物に入っていた。 段ボール“らしき”というのはこの雨で段ボールが濡れてしまった事だけが原因ではない状況で段ボールだったと思われる物はすっかり潰れていたからだ。 声の主は黒っぽい虎柄の小さな猫だがちゃんと雨は凌げていた。 それというのも段ボールだったものの上に座る、スーツを着たずぶ濡れのサラリーマンが猫の(ひさし)となっていた。
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