雨が降る 黄昏時と夜のこと

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翌日、小沼くんは視力が急に落ちたからと先生に直談判し、私の隣から最前列の席へと移っていった。 そうして、本当に私とは口をきかなくなった。 それが功を奏したのかなんなのか、小沼くんが前より少しだけ雅ちゃんと話すようになったからか、夏休みに入ったからなのかはわからないけど、私へのいじめは徐々になくなっていき、五年生を終える頃には、いじめられる前の穏やかな状況に戻っていた。 小沼くんと再び口をきいたのは、高校生のとき。 中学生のときも、実は一度だけ学校の階段の踊り場で声をかけられた。けど、近づいてくる誰かの気配に私が怯えると、小沼くんは走り去っていってしまった。 頭がいい小沼くんと、義務教育が終了しても進学先が同じことに驚いていたら、図書室で鉢合わせをした。もう接することに怯えはしなかったものの、小学生の頃の出来の良さが順調に継承され成長し続けてきた、モテること間違いなしだろうな顔にビビっていると、頭を下げられてしまった。 私こそと謝れば、じゃあもうその話は終わりだと、以後、小沼くんと私はやっと、安心して友人関係を築けるようになる。 お互いが唯一無二の友人ではないし、他の友人もたくさんいる。べったりな関係になるはずはないし、適度な心地よい付き合いは、順調に進む。けど、通話やメッセージに頼ってしまったり、会って話すときになんとなく人目のないところを選んでしまうのは、お互いにあのときのことをどこかで気にしてしまっているのか。 まあそれでいい。雅ちゃんはもういなかったけど、小沼くんは色々と慕われる人だから。 「芹沢と話すのはやっぱり楽しい」 あのときと同じように言ってくれる小沼くんの、外見だけでなく中身のほうも順調な成長に敬服しながら高校生を過ごし、同じ大学で四年を過ごし、同じ会社に就職し、席替えといい何か縁があるのかもねと驚きながら、そのことに笑う私がいた。 「私も、小沼くんと話すの楽しいよ」 小沼くんに、実は私もずっと言いたかったのだ。
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