2016年 春

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2016年 春

 エブリスタの新聞記事を発見したのは偶然だった。  ひょっとしたら奇跡の邂逅だったのではないかと、今でも信じてやまない。  私の仕事は朝早くから始まるので、朝食はビスケットと水だけで済ませる。朝刊をざっと流し読みする時間は八分程度なので、でかい見出しと気になるニュースと四コマ漫画だけぐらいに制約される。(夕方は読めない、夕刊の配達のない田舎に住んでいる)  通勤バスのなかでネットニュースくらい読めばいいのかもしれないが、体質的に合わないので、ひたすらぼーっとしているか猫のごとく眠っているかのどちらかである。まれに仕事の段取りを考えている時もあるけど、まずメッタにない。  私が新聞をじっくり読むのは、そういうわけで、週に二日ある休日の時だけである。  2016年の3月頃だったろうか、ウェブサイトの投稿小説の紹介記事が、「読売新聞」に掲載されていた。それがエブリスタとの出遭いだった。  もしあの時、仕事がオフでなかったならば、おそらく、エブリスタの存在を知らずに別の人生を過ごしていたのではないか。そう思うと、運命の神に感謝してしまうのである。  もともと、中学生の頃から小説を書くのが好きで、将来はその方面に進みたいと思っていた。しかし、絵に描いたようには、うまくいかないもの。社会に出た時は、文学とはおよそかけ離れた職場で働くことに。
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