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彩石騎士たち
―緑鉉騎士―
ファイナ・ウォリス・ザカィア・リル・ウェズラ。
アルシュファイド王国南の東隣国メノウ王国現国王の実弟にして双王の同志たる彩石騎士の彼は、朝の涼やかな空気のなか、剣を振り切る。
相手は、避け様に蹴りを放ち、ファイナはその足を攻撃する勢いを見せながら、その実、深く沈んで、浮いている足ではなく、支点として地に付いている方の足を狙う。
もちろん、避けられるが。
「おはよ!ファイナ!アル!」
「おおーおはよ、アーク」
輝く笑顔を向けるのは、アルも含むとは言え、心ときめく。
「おはよう」
緩む頬を意識しながら、言うと、アークはちょっと、頬を染めたようだった。
かわいい。
「さあ!やるわよ!」
元気に言い放つ声に、ファイナが答える前に、上空から、別の声がした。
「おっ!元気だねえ、私らも仲間に入れとくれ」
「伯母様!」
前代政王ネイが、政王のための鍛練場に降り立ち、すぐあとに、前代白剱騎士ジェドが、同じ屋上に足を付けた。
「一手!お願いします!」
きらきらする瞳で言い放つ姪に、優しい笑顔を向けて、ネイは剣を抜いた。
彼女の美しい立ち姿は、以前となにも変わらないけれど。
若い現代政王の、溌剌とした輝きを。
誇らしく、見せびらかしたい気持ちになる自分は。
確かに、現代の彩石騎士だった。
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