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水曜日 宏
私は息子が心配だ。
昔から優しい子だったが、自分の意見を言い出せず周りに合わせてしまうところがある。
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「あなた、これ見てください。遼太がこんなに小さい。」
小百合が一枚の写真を見せてきた。
今から20年も前の写真だ。
バットを構えたこっちを向いている。
「バットの長さと身長が同じくらいじゃないか。」
思わず目が細くなる。
遼太が小さい頃はよく、キャッチボールをしたり、野球を観に行ったりいろんなところへ遊びに行った。
遼太が中学生くらいの頃からだろうか、私の仕事が忙しくなり、会社を退社するのが日付が変わってからという日々だった。
遼太と接することが減り、いつの間にかコミュニケーションが取れなくなった。
仕方ないのだ、家族のために仕事をしていたんだ。
そう自分に言い聞かせてきた。
…………いや、閉ざしていたのは自分のほうかもしれない。仕事がうまくいかなかった時、家族に八つ当たりしてしまったこともある。
もっと別のやり方があったと今なら思う…………。
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