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木曜日 宏
今はほとんど定時に帰るようになった。
定年してからも嘱託として働いているが、最近の若手とは仕事の進め方が合わない。
この間も
「アポ取ったのか」と確認すると
「LINEしました」と帰って来た。
私の中ではアポは電話で取るものだと思っていた。
今は何かとLINEだなんだ で済ませてしまう。
もう時代に取り残された私のような存在は必要ないのだろうと感じている。
リビングで新聞を読んでいると遼太が帰って来た。
あれこれと矢継ぎ早にいろいろと言ってしまう。
一人の大人として、男として、ちゃんとやってるのか心配で堪らないのだ。
遼太は適当な返事をして、出ていってしまった。
「あなた…………」
台所から小百合が出てきた。
「わかっている。今のがいけないんだろう。」
「遼太ももういい大人なんですから」
「そうだな…………」
小百合が淹れてくれたお茶に手を伸ばし一口啜る。
アチッ!
今度は慎重にもう一口飲んだ。
「明日、私も行きましょうか?」
小百合は心配そうにしている。
「いや、大丈夫だ。せっかく遼太から誘ってきてくれたんだ。長年の夢だった、息子との晩酌ができる。明日は言い方に気を付けるよ。」
心配だわ、と言い残し小百合はまた台所へ戻っていった。
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