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水曜日 遼太
俺は親父が苦手だ。
親父は頑固で短気、それに家事を手伝っているところを見たこともない。
俺は親父を反面教師として生きてきた。
親父みたいにはなりたくない。今でも、そう思っている。
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「ちょっと遼太!聞いてる?」
リビングから恵美子がこちらに顔を向けている。
「あぁ、悪い、なんだったけ?」
どうやら恵美子が何か話しかけていたようだ。
まったく気が付かなかった。
「明後日でしょ!?お義父さんとの日。大丈夫なの?」
「大丈夫だろ。少し話をするだけだ。」
「大丈夫じゃないよ、もう何年まともに話をしてないの?この間だって、私ばっかりお義父さんとしゃべって遼太は全然話してないじゃん。」
親父とはここ数年ほとんど会話をしていない。
何を話せばいいかわからないのだ。
「遼太って反抗期とかあったの?お義父さんに『うるせぇ!』とか言ったり…………」
「俺、反抗期ってあんまりなかったんだよね。
親父も俺が起きる前に仕事に行って、寝てから帰ってくるような生活だったし、大学生からずっと一人暮らしだし…………一緒に暮らしててもあんまり会うことはなかったかな。」
事実、中学、高校と同じ屋根の下に暮らしながら親父とは会わないことが多かった。
「そういうもんかね?…………じゃあ、何?今は遅れてきた反抗期?」
恵美子は意地悪そうに笑う。
「なんだよそれ。母さんにも、反抗する気持ちを持ったことないな。」
「ねぇ、明後日はあたしも付いていこうか?」
恵美子は心配そうに覗き込んでくる。
「大丈夫だって!話くらいできるよ」
そうは言ったものの内心付いて来て欲しかった。
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