11人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
花野 真理子 Ⅰ
桜も散り、夏の足音が聞こえ始めたある日の夜。
居酒屋で合コンに参加していた私は、カシスオレンジを注文した。
目の前の彼もちょうどハイボールを飲み終えたところだった。
「何か飲みます?」
「あ、またハイボールで!」
彼はハニカミながらも空いたグラスをクイッと持ち上げた。
またこれで、と言うように。
これが、彼との始まりだった。
合コンが始まり、居酒屋のバイトがラストオーダーを聞きにきたのは 、隣の男の子がガンダムについて熱く語っていた時だった。
その向かいの女の子は、「へぇ」とも「ふーん」とも言えない曖昧な返事で興味は無さそうだ。
会計を終え、店を出た時、
「あの、」
後ろから突然話しかけられた。
「あの!よかったら連絡先交換してもらえませんか?」
後ろにいたのは向かいに座っていたハイボールの彼だった。
予想外の出来事に私はしどろもどろに連絡先を交換した。きっと私はうまく笑えていなかっただろう、、、。
翌朝、彼にラインしようと思った。
ラインを開き文字を打ち込む、、、今日は、ゴールデンウィーク最終日、こんな日にいきなりラインしたら迷惑かな…
私はそのまま携帯を閉じた。
あの日から何日も経ってしまっている。
未だに一通のラインすら送れていない。
別に好きだとかそういう感情があるわけじゃない。ただ、、、ただ、なんとなく気になるのだ。
今日こそは送ろう。そう決心した。
仕事の帰り道、携帯を開いた。
「この間はありがとうございました!」
その後を他愛もない文を打つ。
何を送ればいいかわからず、つい長文になってしまった。
こんな長かったらいやがられるかな。
私は迷ったが、最後は勢いで送信した。
ピコーン、彼からの返信はすぐあった。
反応があったことが嬉しかった。
帰り道、私はコンビニに寄り、飲み物売場に立つ。今日はなんだか、呑みたい気分だ。
カシスオレンジを手に取った。
…私はフフッと笑い、今日はこっちにしよ!、、、
ハイボールを手に取り私はレジへ向かった……
最初のコメントを投稿しよう!