11人が本棚に入れています
本棚に追加
下津 成義 Ⅳ
気がつけば辺りはすっかり暗くなり、パーク内の湖の向こう側ではパレードが始まっていた。
遠くで様々なキャラクターを型どった車が華やかにライトを照らし夜空に光っていた。
「…寒い」
彼女は両手で自分を抱えるようにして言った。
夜になり気温も落ちてきた。
俺達はまだあのベンチに座っている。
お互いの家族の話、友達のこと、高校時代の部活のこと!仕事のこと…………まるで何年も前から知り合いだったように色々な話で盛り上がった。
俺はこのまま告白するつもりでいた。
今日1日で彼女ともっと一緒に居たいという気持ちがどんどん大きくなっていく。
おれはこれが「恋」というものなんだと気付いている。
「あの!」
おれはいつかの飲み会の時のように突然話し始めた。
彼女は少し驚いた表情を見せ、一瞬の沈黙が二人を包んだがやがて彼女が、どうしたの?、と話した。
「あの、俺、、、」
話し始めたのはいいが、なんと言えば良いか、なんて伝えたら良いか考えていなかった。
さっきまで、普通に話せていたのにいざと言うときに、うまく言葉が出てこない。
彼女は俺が何を言おうとしているのかだいたい察しているようだったが俺が話すのを待ってくれていた。
「あの、、、俺と、結婚してください!」
しまった!!
結婚を前提にお付き合いを、というところを焦ってしまった。
一瞬の間のあと
フフッ、
フフフフ、
アハハハハ!!
彼女は最初吹き出し、その後堪えきれず笑った。
「焦りすぎだよ! !
、、、でも、お付き合いからならいいよ。」
俺は顔が赤くなっていくのがわかった。
「私は今日1日デートしてみて、もっと一緒に色んなとこにいけたらいいなと思ってた。それに下津くんのまっすぐなとこ、私は好きよ」
彼女はまっすぐこっちを見て、嬉しそうに言った。
見つめられるのが恥ずかしく、また顔が赤くなっていく。
その様子を見て彼女はまた笑った。
帰り道、閉園の音楽が流れるパークを後に駅に向かっていた。
二人の間にはさっきとは違い、心地よい沈黙がながれていた。
言葉を発してないが、心で会話している気がした。
やがて、ホームに着き俺達は別々の電車に乗った。
電車の中でもLINEでやり取りを続けている。
告白の緊張が解け嬉しさが込み上げてきた。
電車の窓に写る自分はニヤケていた。
「駅に着いたよ」
彼女からそんなLINEが来たのは俺が家に着く少し前だった。
「俺はもうすぐ家だよ。」
「私は今、家に向かって歩いてる」
「気を付けてね」
そんなやり取りをした。
家に入りベッドに寝転がる。
かなり疲れていたのだろう。
いつの間にか眠ってしまった。
気がつくと夜中の3時になっていた。
携帯を確認すると、俺が最後に送ったLINEが既読になっていなかった。
彼女は家に着いてそのまま寝てしまったのだろうか。
俺は服を着替え、幸せな気分なままもう一度眠りについた。
最初のコメントを投稿しよう!