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山口 謙二 Ⅱ
「あの、、、連絡が取れないんです。」
喫茶店の店内で目の前にいる恵梨は困ったような顔で訴えてきた。
あの合コンの日、謙二は恵梨を誘い飲みに行った。それは恭子から
「恵梨は何か悩んでるらしい、
心配だからそれを聞き出してほしい」
とお願いされていたからだ。
初対面なのに、悩みなど話すだろうかと恭子に問いかけたが、見ず知らずの人のほうが相談しやすいこともあると返ってきた。
全くもって女心は理解できない。
「つまり、、、」
謙二は一呼吸置いて話し始めた。
「俺達ははめられたらしいな。」
「どういうことですか?」
恵梨から一通り話を聞き、謙二は理解した。
「俺の方は恵梨さんが悩んでるから話を聞いてほしいと恭子さんに言われていた。そして恵梨さんは年下の彼氏に物足りなさ、幼さを感じていた。そんな時に年上の男性に誘われたらついていくと恭子さんは読んだ。大学からの付き合いの二人だ、行動はだいたい予想できる。そして、万一誘い乗らなかったとしても、二人が近距離で話している写真が撮れればよかったのだろう。
、、、疑惑。
それさえ作ることができれば、あとは写真を撮るだけだ。」
はぁ~、、、
恵梨は深いため息をついた。
「まんまと私はそれに乗ってしまったんですね?そして、撮った写真を彼氏に送る。
でも、なんでそんなこと。」
「それを聞きたくて恭子さんに連絡取りたいんだろ?」
「、、、そうでした。それが、どれだけ電話してもずっと不在で音信不通なんですよ。」
「それで、幹事だった俺なら連絡を取れるんじゃないかと思ったわけか」
恵梨は無言で頷いた。
残念だが、謙二が、電話してもつながらない。
二人の間に重い空気がながれた。
コーヒーを一口、二口と飲んだところで
急に携帯が鳴り、音に驚きながらも謙二は電話に出た。
下津からだった。
電話を取るなり下津が言った。
「あの、、、連絡が取れないんです」
なんだよ、またかよ!
下津の話を聞くために、謙二たちに合流するよう伝え、電話を切った。
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