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山口 謙二 Ⅳ
改札を抜け、ホームに上がる階段の手前で下津と別れた。
電車に2駅乗り、着いたのはあの合コンが開かれた居酒屋だった。
謙二にはやることがあった。
店の裏口に回るとちょうど男が出てきた。
「…………なんすか?」
男はこちらに気付き警戒した。
一目見て、謙二にはそれが目的の人物だとわかった。
「ちょうど君に用があるんだ。」
謙二は男に話しかけた。
「あんた、たしか恵梨と一緒に写真に写っていた…………」
男は記憶を辿るように徐々に距離を詰めてきた。
謙二が会いに来たのは恵梨の彼氏だ。
「あぁ、そうだ。俺があの日、恵梨さんを誘い写真に写っていた男だ。山口 謙二だ。」
山口…謙二…と男は繰り返して呟いた。
「…で、その山口さんが、俺に何の用すか?」
男は不機嫌そうにしている。
「君の誤解を解こうと思ったんだ。あの日、恵梨さんと俺は何もなかったし、はめられたんだ。」
謙二は相手の様子を見ながら釈明した。
男はさらに不機嫌そうになった。
「確かに恵梨も同じようなことを言っていたな。だが、そんな事二人で口裏合わせたら何度でもなるっすよね?」
男はまだ疑いの姿勢を崩さない。
まぁそうだろう。想定していたとおりだ。
「少し君に付き合って欲しい場所があるんだ。バイトはもう終わりか?」
「そ、そこに仲間とかいるんじゃないんだろうな!?」
謙二にぼこぼこされるとでも思ったのだろうか。
男は急に狼狽えたのが可笑しく、堪えきれず吹き出してしまった。
「お前、何笑ってんだよ!」
今度は男は怒りだした。
「わりぃ、そんな事しないよ。付いてくればわかる。」
そう言うと謙二は男を半ば強引に連れ出した。
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