11人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
下津 成義 Ⅶ
後日、ご両親から事故の詳細を聞いた。
遊園地からの帰り道、一方通行を逆走してきた車に轢かれたこと。
その車を運転していた男は酒を飲み、さらにクスリ、所謂、合法ドラッグといわれるものを服用していたこと。
その男は気が狂い、事故後も笑い続けていたこと。
未だに謝罪すらないこと…………
事故の話は聞くに耐えれず、ただ、悔しさばかりが積もっていった。
事故から3ヶ月が経っても俺はまだ、立ち直れずにいた。
家に引きこもることが多くなり、会社も辞めた。
髭も髪も伸び、もはや人間では無くなったようだ。
だが、今日だけはなんとしても外にでなければいけなかった。
8月7日は真理子さんの誕生日であった。
髪を切り、髭を剃り、身なりを整え、両親に教えてもらった真理子さんのお墓へ向かった。
ヒグラシが鳴く山中をBGMもかけず、車はひたすら登っていく。
墓に着き、線香をあげ、手を合わせる。
目を瞑ると不思議と真理子さんが近くにいる感じがした。
私のことを忘れてほしいとは言えない、、、
でも、私のことを忘れないでとも言えない、、、
自分勝手でごめんなさい。でも、前を向いてほしい。
………………声が聞こえたわけではないが、そう言われた気がした。
間違いなく彼女はそう言っている。
不思議な夢を見たあの日、彼女はきっとさようならを伝えにきたんだと。
お墓を後にし、車を向かおうとした時、ふと遊園地のデートでした会話を思い出した。
……
「マリーゴールドの花言葉って知ってる?」
「知らないよ。花言葉は何?」
「教えないよ!次のデートまでの宿題ね!」
彼女はイタズラっぽく笑っていた。
……
携帯を取り出し「マリーゴールド 花言葉」と検索した。
花言葉は
「悲しみ」
そして
「変わらぬ愛」
車に戻ると心地よい風がフッと吹いた。
足元には一輪のマリーゴールドが風に揺れている。
最初のコメントを投稿しよう!