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下津 成義 Ⅱ
今日は、始めて二人で遊びに行く日だ。
フーッ。
鏡に写る自分を見て深呼吸をした。
何を着ていくか迷い、3度着替えたが結局一番最初に選んだものを来ていくことにした。
駅に着くとちょうどホームに電車が滑り込んできたところだった。
この電車に乗れば待ち合わせよりもかなり早く着くことができる。
待ち合わせ場所に先に着いて相手を待つのは当然のことだ。
電車の中は混んでるわけではないが、それでも立っている人が何人かいた。
つり革を持ち、今日のデートを頭の中で想像していたとき、
お久しぶりです、
隣の男性に突然話しかけられた。
えーっと、
しばらく困惑していたが、
あのときの?
半信半疑で俺は聞いた。
背が小さく、小太りの男は明るい表情で頷いた。
「そうですそうです!あの時合コンの時にいた!」
正直、あまり覚えていないが、あの日の合コンに参加していた男だった。
ほとんど会話をしなかったので、名前すら思い出せない。
「こんなところで、下津さんにまた会うなんてスゴい偶然だなぁ。いまからどこにおでかけですか?」
俺はわざと迷惑そうな顔をするがその男はしゃべり続けていた。
はぁ、とか まぁ、とか 適当に返事をしたと思う。
やがて電車は次の駅で停車するためにスピードを落とし始めた。
「僕はこの駅で降りるんですよ!いまからちょっと集会があって。」
特に聞いてもいないが相変わらず小太りの男はしゃべり続けていた。
あと数秒で電車も止まる、というタイミングで男はようやく喋るのをやめ、それじゃ!、と出口に歩き始めた。
、、、が、数歩歩いたところで足を止め振り返った。
「あ、そうそう。この間の飲み会で、下津さんが連絡先を聞いていたあの子。あの子と仲良くなることはおすすめはしません。悲しい結果になるだけですよ。」
男はそう話すと颯爽と電車を降りていった。
「え?それってどういう意、、」
俺は意味がわからず男に話しかけようとしたが、電車の扉が閉まり、話を聞けなかった。
さっきの話が聞こえたのだろう。
俺の前に座っている貴婦人が興味深そうにこっちを見てくる。
だが、今の俺にそんなことを気にしている余裕はない。
どういうことだ、、、
なぜ、あの男が何を知っているのか、、
真理子さんと知り合いなのか、、、
ワケがわからずモヤモヤしたまま、俺は終点で降り、待ち合わせ場所に向かった。
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