39人が本棚に入れています
本棚に追加
真っ直ぐに愛する力
クーヤの黒い背中は突き刺さる太陽の熱に焼かれ
無残にヒビ割れ やがて溶けて跡形もなくなった
その夜 清い蒼い月の光が ガタガタ虫を包んだ
ひとまわり大きくなったガタガタ虫の体を包んだ
得体のしれない力が漲って クーヤは 目覚めた
大きく羽を広げると今まで感じたことのない心が
クーヤの向かう空いっぱいに明るく広がっていた
この世界に宿るすべての命が自らの細胞のようだ
力強く羽ばたいたクーヤの耳に響く懐かしい羽音
カシャカシャいう変な羽音は ガタガタ虫の羽音
クーヤは風のない鏡面のような湖に 姿を映した
そこに映っていたのは 大好きなガタガタ虫の姿
クーヤは湖畔の木に止まり自分の魂に問いかける
真っ直ぐに愛することの記憶がいっぱい詰まった
魂は 真っ直ぐに愛する力を持ったクーヤの魂と
一つになって 新しいガタガタ虫が生まれたのだ
助けて・・・と 倒れた大木の折り重なる下から
誰かが呼んでいる ガタガタ虫になったクーヤは
迷いなく 命の悲鳴を聞きつけて そこへ向かう
清い月の光は生まれ変わった救世主を包んでいた
完
最初のコメントを投稿しよう!