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愛のシェルター
「いつもは泣き虫のクーヤが 今日は どうしたんだ?」
オオスズメバチの Z は ジリジリとクーヤの前に近づき
いきなり おしりから鋭い毒針を グイッ と伸ばすと
ふわり と 浮き上がり その毒針を クーヤめがけて
突き立てようとした その時!
ガタガタ虫は ガバッ とクーヤの上に覆いかぶさった
クーヤの体は あたたかく弾力のあるガタガタ虫の腹板の下に
スッポリはまり込み 強靭なシェルターに護られたようだった
「どけやがれ!くそったれが!小生意気なガキ…出てきやがれ!」
Z は口汚く罵り怒鳴り散らしながら どうやら
ガタガタ虫の背中めがけて 何度も何度も毒針を突き立てている
「ッテメ~なんて堅い体してやがる!クソッ!このぉ!」
Z が毒針を突き刺そうとガタガタ虫に激しく体当たりする衝撃は
腹の下に隠れるクーヤにも ズンッ ズンッ と伝わってくる
ガタガタ虫は うめき声さえ漏らさず じっと耐えている
クーヤは心配になった こんなに毒針で突かれて 大丈夫かな?
ボクのために ガタガタ虫が死んでしまったら どうしよう?
「もう逃げて!ボクを護らなくていいから逃げてよ!」
クーヤはガタガタ虫の腹の下で 泣きそうな声で叫んだ
「心配するな オレは平気さ 神さまに守られているからな」
ガタガタ虫は 苦しそうな声で 息も絶え絶えに そう言った
クーヤはガタガタ虫の腹の下で泣いた 涙があふれ体が震えた
こんな気持ちは生まれて初めてだった 急に力が沸き上がった
クーヤはガタガタ虫の大アゴの隙間から 自分の大アゴを出し
ガタガタ虫の体を グイッっと上に持ち上げた その時だった
「アウッ・・・クソッ!憶えてやがれ~」
一瞬 ガタガタ虫の体が浮き上がったことで
動かないと思って毒針を突き続けていた Z の針先に
予想し得ない強い衝撃が加わり Z は痛手を負ったらしい
オオスズメバチの Z は 飛び去った
クーヤが急いで ガタガタ虫の腹の下から這い出てみると
ガタガタ虫は もう息も絶え絶えになって 動けずにいた
ガタガタ虫のガタガタの背板や上翅は 毒針に突かれて
ガタガタの体は痛々しい無数の深い傷でボコボコになっていた
その悲惨な姿に クーヤは 激しい怒りと 激しい愛を感じた
クーヤは心から神さまに祈りながら ガタガタ虫の無数の傷を
クーヤの涙で 一つ一つ ていねいに 洗い清めていった
クーヤの涙が傷に落ちると 傷は 不思議な青い光に包まれた
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