1話 同居人

1/3
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ

1話 同居人

 薄暗い屋根裏。  本来、ネズミが住むはずの居住区には、薄暗く、荒れているように見えながらも、埃は無かった。 「……」  そこで眠る小さな姿に近づく、仮面をつけた男は、少女の傍らに座ると、しばらくその姿を見つめた。 「ん……?」  やがて、少女が寝ぼけ眼を開くと、その背を丸め、額に口付けを落とす。 「ぅぁぁ……」 「おはよう。朝だぞ。ティア」  ゆっくりと体を起こすティアは、ゆっくりとした瞬きの後、男に寄り掛かり、首筋へ口付けた。 「…………」 「ぉはよぅござぃます」  まだ眠そうな声で挨拶をするティアに、男はしばらく固まった後、とりあえずその小さな体を抱きしめた。 「……もっかいねれる」 「む……それは良くないな。では、そろそろ本当に起きるとするか」  朝食後の温かいカフェオレに口をつけながら、すっかり目の覚めたティアはじっと男のカップに目をやっていた。 「また挑戦するか?」 「する」  ブラックコーヒーを受け取り、カップを傾ける。 「……苦い」 「まだティアには早いか」 「んー……」  返されたブラックコーヒーを平気な顔で飲み干した男に、ティアも自分のカフェオレに手を付けた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!