1話 同居人

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 大きめの袋、手袋を鞄に詰め込み、外へ出る。 「おや、お出かけですか?」 「うん。魔法薬作ろうと思って、森になんかテキトーに探しに行く」  門の上に座っていたガーゴイルの石像が、微妙な表情になった。  対照的に、向き合うように座っていたガーゴイルは笑う。 「ティアは本当にテキトーに何でも取ってくるからなぁ」 「ちゃんと手袋は持ちましたか? 薬草には、触るだけで危ない物もありますからね」 「まぁた、寝込んでも知らねぇよ?」  最近で言えば、1ヶ月前にも、毒草の棘が刺さり、寝込んでいた。 「ガンバリマス」 「いえ、頑張るとかではなく……」 「そーそーディア……じゃなかった。ニッケル様も、ティアが森で行き倒れたらさすがにビビるし?」  そう言われれば、ティアも少し困ったように唸り、頷いた。 「ちゃんと、お家に帰ってきてから倒れることにします……」  そういうことではないが、なにも言わなかった。  森の中は、奥に行けば行くほど、人の手は入らず、歩きにくくなり、危険も増える。  獣もいれば、妖精だっている。珍しい薬草だって。 「ふふふ~ん」  鼻歌交じりに大きな袋の中に、薬草を摘んでいく。  食べられそうなものは別の袋へ。 「いい匂い……」  甘い香りの漂う果実。  手に取って、口元へ持ってくるが、その手を止める。  前に一度、食べられそうと口をつけて、倒れたことがある。 「……舐めるだけにしよう」  山菜取りのオジサンに、森で遭難して、どうしても食べ物がない時に、食べられるかどうかを判断しなきゃならない時は、一口、齧り、舌にのせろと言われた。  それでしびれたら食べたらいけないもの。しびれなかったら、ひとまず少量腹に入れると教えられた。 「む……いける」  食べられそうと一口齧り、いくつ果実を袋の中へ放り込んだ。  
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