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森でテキトーに拾ってきた薬草を鑑定するのは、ニッケルの役目だった。
机の上に並べられた薬草の数々。
「ふむ……」
まずひとつ、指さした。
「これの名を覚えているか?」
「確か、ヒダネソウ」
「その通り。蕾以外はロクに使えない薬草だ」
ティアが摘んできたのは、まだ蕾すらつけていない。根ごと摘んでいるため、庭にでも埋めれば、蕾になるかもしれない。
ふと、ティアがヒダネソウを掴むと、微かに光り、蕾になった。
「素晴らしい」
「やった」
「では、ヒダネソウを使った魔法薬の調合でもするか」
「うん!」
楽しそうな表情で、普通の魔法使いのように魔法薬を調合するふたり。
そんなふたりを見つめる影がひとつ。
「ニッケル?」
「どうした? 今にも爆発しそうな窯には、今すぐ蓋をするといい」
「やっぱり爆発しそうだよね!?」
慌てて蓋をすれば、数秒後、小さな爆発音と衝撃が手に伝わってきた。
静まった窯の中を、そっと開ければ、緑色の薬ができていた。
「できた!」
「ふむ……」
ニッケルは、指でその薬を掬い上げると、躊躇なく口に入れた。
真似をしようとするティアの腕は掴みながら。
「ふむ……出来は中の上といったところか」
「食べ、られ――」
「ぬ」
赤子のように気になるものを口に入れようとするティアを抑えながら、薬を瓶に詰める。
「それ、爆発するんだよね? 嫌な奴の家に放り込むの?」
「フハハハ! 投げ込みたい奴でもいるのなら、使うと良い! 我もついていこう」
「とりあえず、思いつかない」
「そうか。残念だ。では、我の知り合いにでも送り付けてやるさ」
その笑みはまさに、
「悪魔みたい」
「大悪魔であるからな」
悪魔の笑みであった。
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