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2話 小さな恋人
「あぁ……どうして、ディア様があんな人間の小娘なんかに」
使用人の女がため息をつく。
この世界に、悪魔の語源ともなったディアボロス、その人が、人間の少女を愛でている。
確かに、希少な能力は持っているが、神々とも戦い、悪魔たちを率いる存在でもある大悪魔が、その程度の存在をペットとして愛でることが不思議でならなかった。
「コーヒー飲む?」
「頂こう」
本当に、
「商店街に行ったら、りんごおまけしてもらった」
「ほぅ。よかったではないか」
「うさぎの作り方も教えてくれた」
本当に、幸せそうで……
「ペット扱いなわけないじゃぁぁぁん……」
「仕事しろ」
使用人たちの長である、悪魔に咎められる。
仮面の下で見たこともないほど、柔和な笑みを浮かべる主人に、真意がわからないなどという使用人がいたならば、外のガーゴイル共に食わせた方がマシだ。
「ディア様の幸せはうれしいんですよ!? でもですけどね!! ご自身の名前をあげる程の……うわぁぁん!」
泣きながらも、しっかりと手は動く女に、何も言わず、自分の仕事を進める。
ディアボロスの本来の住処は、地上ではなく地獄に存在する。
この屋敷は、数ある仮初の屋敷のひとつであり、本来手入れなどほとんどしないが、この屋敷にはティアがいる。
仮初の屋敷の整備と同じように、部下に任せるかと思っていたが、意外なことに屋敷のことは、ほぼ全て、ディアボロス本人が行っている。
ティアのことを気にするのであれば、部下をひとりつければ良いと進言したが、そこは悪魔というべきか、誰にも与えぬと拒否された。
あの屋敷で、ティアとの接触が許されているのは、屋敷の警備であるガーゴイル二基とディアボロスの古い友人だけ。
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