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1話 同居人
薄暗い屋根裏。
本来、ネズミが住むはずの居住区には、薄暗く、荒れているように見えながらも、埃は無かった。
「……」
そこで眠る小さな姿に近づく、仮面をつけた男は、少女の傍らに座ると、しばらくその姿を見つめた。
「ん……?」
やがて、少女が寝ぼけ眼を開くと、その背を丸め、額に口付けを落とす。
「ぅぁぁ……」
「おはよう。朝だぞ。ティア」
ゆっくりと体を起こすティアは、ゆっくりとした瞬きの後、男に寄り掛かり、首筋へ口付けた。
「…………」
「ぉはよぅござぃます」
まだ眠そうな声で挨拶をするティアに、男はしばらく固まった後、とりあえずその小さな体を抱きしめた。
「……もっかいねれる」
「む……それは良くないな。では、そろそろ本当に起きるとするか」
朝食後の温かいカフェオレに口をつけながら、すっかり目の覚めたティアはじっと男のカップに目をやっていた。
「また挑戦するか?」
「する」
ブラックコーヒーを受け取り、カップを傾ける。
「……苦い」
「まだティアには早いか」
「んー……」
返されたブラックコーヒーを平気な顔で飲み干した男に、ティアも自分のカフェオレに手を付けた。
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