ごめんね、ありがとう。

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早川先輩は先週金曜日に交通事故に遭い、今も意識不明のままだ。 雨が降り出した直後の事故で、先輩は鞄の中の折りたたみ傘を探していて突っ込んで来る車に気が付かなかったんだとか。 それから毎日傘を持って来る私を待っている。 明日は雨が降らない。 雨が降らなかったら先輩はどうなるんだろう。 「もう津田ちゃんの傘に入れないかもね」 「じゃあ雨降らせてください」 2つ目の信号。 あの角を曲がったらもう駅だ。 「あはは、結構無茶言うね」 「嫌です。先輩がいなくなるなんて」 「わお、熱烈だ」 「…今日は帰りたくない」 「こらこら。女の子がそういうこと言うのは大人になってからだよ」 「…先輩」 「だめだよ。俺もう死んでるんだ」 「生きてますよ。意識不明だけど」 「だって戻り方わかんないし」 「病院はあっちです」 「ここから動けないんだ」 「でも身体を持ってくるのは厳しいです」 「だよね」 「なんで傘があると動けるんですか?」 「さあ」 「なんで私にだけ見えるんですか?」 「なんで泣いてるの?」 「…戻ってくれたら教えてあげます」 「俺ずっとこのままなのかな」 「…そんなの七不思議になっちゃいますよ」 「それもいいな」 「いいわけないでしょ」 「だって津田ちゃんとずっと話してたいし」 「…ばかじゃないの」 「ひどいなぁ。死人なんだから優しくしてよ」 「呪うんですか?」 「そんな力ないけど…悲しくてずっと雨降らせちゃうかも」 「いいですよ。ずっと雨でも」 「…駅着いちゃったね。傘、入れてくれてありがとう。車に気を付けてね」 「また、明日」 「…うん」 また、あした あえたら
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