28人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
雑貨屋に行った帰りは商店街をぶらぶらして、ナナセをアパートに送って行った。
「上がってく?」
帰り際に買った缶コーヒーをかざし、ナナセは言った。
「うーん。昨日は普通に上がったけど、何気に初めて部屋に入ったんだよな」
「そうだっけ」
「そう。色気のない部屋だなって思った」
「失礼ね」
じゃ、と部屋に入る前のナナセの表情が気になって、呼び止める。
「ナナセ」
「ん」
振り向いた彼女はいつもの表情で。
昨日の顔じゃない。
「ほら、俺、まだ傷心だから、また気晴らしに付き合ってほしい。今まで週末はアミ一色だったから」
ナナセはほのかに笑った。
「いーよ。暇だし。それってデート?」
「デートっつっても、飯くって、話して、好きな店うろつくだけ。映画を見てもいいし、ナナセが好きな推理小説を探しに古本屋巡りに付き合ってもいい」
「プラモデルの店もそれに追加してくれる?」
「デートの割に色気が全然ない」
「女同士でもデートって言うし、男同士でデート……って使うとなんだか色々想像が膨らむけど」
「男も女同士のデートで色々膨らむよ」
「なに、急に下ネタ?」
「いや、下ネタじゃなくて、さ。女の子同士でキャキャしてるの見るのも、いいってだけで、具体的な何かが膨らんでいるわけじゃない。想像だけ」
「はいはい、そう言うことにしておいてあげる」
「ナナセが言うと全部色気がなくなるのが不思議だ」
「じゃ、また来週」
パタンとアパートの扉が閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!