透明パラソル

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 雑貨屋に行った帰りは商店街をぶらぶらして、ナナセをアパートに送って行った。 「上がってく?」 帰り際に買った缶コーヒーをかざし、ナナセは言った。 「うーん。昨日は普通に上がったけど、何気に初めて部屋に入ったんだよな」 「そうだっけ」 「そう。色気のない部屋だなって思った」 「失礼ね」 じゃ、と部屋に入る前のナナセの表情が気になって、呼び止める。 「ナナセ」 「ん」 振り向いた彼女はいつもの表情(それ)で。 昨日の顔じゃない。 「ほら、俺、まだ傷心だから、また気晴らしに付き合ってほしい。今まで週末はアミ一色だったから」 ナナセはほのかに笑った。 「いーよ。暇だし。それってデート?」 「デートっつっても、飯くって、話して、好きな店うろつくだけ。映画を見てもいいし、ナナセが好きな推理小説を探しに古本屋巡りに付き合ってもいい」 「プラモデルの店もそれに追加してくれる?」 「デートの割に色気が全然ない」 「女同士でもデートって言うし、男同士でデート……って使うとなんだか色々想像が膨らむけど」 「男も女同士のデートで色々膨らむよ」 「なに、急に下ネタ?」 「いや、下ネタじゃなくて、さ。女の子同士でキャキャしてるの見るのも、いいってだけで、具体的な何かが膨らんでいるわけじゃない。想像だけ」 「はいはい、そう言うことにしておいてあげる」 「ナナセが言うと全部色気がなくなるのが不思議だ」 「じゃ、また来週」 パタンとアパートの扉が閉じた。
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