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きらきら光る水たまり、そこには雨が去ったスカイブルーが浮かんでいた。
俺は右手のビニール傘に目を落とした。
小学生の頃、雨が上がった日の遊びとして「透明パラソル」ごっこ、をよくやっていた。
登校時に降っていた雨を防ぐために必須だった傘は、帰路では荷物になる。
そんな時、はやっていたのが、この遊びだ。
帰る方向が同じ者同士で、ジャンケンをし、負けた人は傘をさして「透明人間」になる。
そして、その場にはいない者として扱われる。軽くいじられたり、いじわるされたりする。
大人になった今では、雨上がりに傘をさしたって透明になどなれない事はとっくに気づいている。でも、悲しい事があればそのたびに思い出していた。
濡れたアスファルトの水たまりを蹴飛ばす。シューズに水滴が飛び乗った。持っている透明の傘をさしてみるけれど、やはり透明人間にはなれるはずもない。
分かってはいるが、俺は今、透明になりたい。
腕時計に視線を落とし、待ち合わせの駅に向かう。
ナナセはきっと泣きそうな俺の顔を見て、やっぱり、と言って笑うだろう。
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