透明パラソル

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 ナナセとは小学生の頃からの付き合いだ。彼女は昔から合気道をしていて、並の男より強かった。高校の時には全国大会にも出場していたと思う。 当時、少しばかり、横道に逸れていた俺は親に怒られるより、ナナセに殴られる方が怖かった。だから、いつも俺が大きく道を踏み外しそうになった時――高校卒業前に喫煙を教師に見つかった――に、学校の廊下で俺をタコ殴りにした。教師が口から血を流し青痣だらけにされた俺に同情し、退学から停学に格下げしてくれた過去もある。  社会人になってもこうやって性別を超えた友人として、付き合いがあった。お互い二十六で、四捨五入すれば三十になる年月が経った。  気が向いたら、呼び出しあって、飯食って、酒飲んで、近況報告をし合って。ナナセから浮いた話を聞いた事はなかった。  ーー――ただ。  体はこんなに痩せてはいなかった。女にしては筋肉質だったが、もっと肉があったはずだ。彼女を運んで、こんなに痩せていたのかと、正直驚いた。
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