透明パラソル

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 酒を飲んだ男女が一夜の過ち、的な展開には俺たちはならない。距離が近ければ近いほど、男女は簡単に恋愛関係にはならない。んじゃなくて、んだ。正しくは。  俺はナナセのアパートに泊まった。  徐々に夜明けを迎え、白んでいく部屋の中で、モノトーンの部屋が姿を表した。カーテンもベッドシーツも家具も黒かグレーで、床に並んだヘリコプターや自衛隊の戦車のプラモデルを見て俺はげんなりした。花柄カーテンや料理本を今更ナナセに期待したわけではないが、なんていうか、ただそそられない。 「痛て」 床で寝てたからだ。 起き上がり、時計を見る。朝の5時。カーテンを開けると一日はもう始まっている様子だった。  ベッドの中で寝息が聞こえる。俺は物音を立てないように、そろりと部屋から出た。
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