始まりの朝

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「精一杯がんばります。よろしくお願いいたします。」 フロアの奥の方で、緊張感の漂う声がする。 社外研修を終えてから初めて出社してきた新入社員たちが挨拶をしているのだ。 俺はちょうど、客先にアポイントの電話をしていた。 月曜の朝は忙しい。 他の社員も、電話対応や来客に追われている。 新入社員たちには申し訳ないが、これも社会人になってから受ける先例の一つと言えるだろう。 今年の新入社員は、男女合わせて5人らしい。 うちの部署には女の子が一人、事務職で配属されることになっている。 こういう情報は、新入社員の入社前から、噂好きの奴がどこからともなく仕入れてくる。 「横山~!お前んとこは女の子でいいなぁ!」 同期の前田が話しかけてくる。 そう、こいつみたいな。 「会社は仕事するとこです。」 俺は棒読みで返す。 「おいおい、固いこと言うなよ~!潤いって、必要じゃん!?」 こいつは、こういうおちゃらけた奴で、仕事には真面目だが、保守的すぎる上司からは厳しい目で見られている。 「前田さん!先週言ってた伝票、早く出してください!」 「げっ、やべー」 早速、経理の事務の子が彼の席にやってくる。 「ははっ!お馴染みの光景だな!」 前田をちょっと小突きながらコピーを撮るために席を立つ。 俺も入社3年目か。しっかりしなくては。 会社は仕事をするところ。 本気でそう思っていた。 だから、この時、横を通った君の視線にも気づかず、これから起こることも予想していなかったんだ。
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