30人が本棚に入れています
本棚に追加
あれは、ちょうど1年前の雨の日のお昼過ぎ。
私は大学4年の6月という、就職活動の沼に嵌っていた。
その時も、最終面接後の「お祈りメール」が届き、私の気分も雨模様。それも、台風レベルの。
その面接では、自分が準備してきたことの全てを出し切り、面接官でもあった会社の社長から「あなたのような人を探していました」と言われ、握手まで交わしたものだから、正直合格以外ありえないだろうと思っていた。
さらに言えば、第1志望の企業だったから、期待も相まって先走り、その他決まっていた面接を全て辞退してまで、「合格の報せ」を待っていたのだ。
「あー……」
意味なき声をあげながら、私は部屋でそのメールを受け取る。
すでに家族には「今日内定が出るかも?」など先走った報告をしていたものだから、特に母親からは「決まった?決まった?」と期待に満ちたラインが並ぶ。一緒に送られてくるスタンプが、親の姿とはかけ離れて可愛らしく、余計にモヤモヤが積もる。
(こっちの気も知らないで……)
スマホを壁に投げつけて全てをなかったことにしたいと思ったが
(とにかく次探さなきゃ……)
と、一欠片の理性が働いたことで、スマホの破壊はとりあえず避けられた。
でも、スマホを操作しようと指を画面に滑らせてもうまくいかない。
親指が動かない。
それは、汗で滑っているからなのか、指先が震えているからなのか。
気がつけば、窓の外が、ほんの少し暗くなっていて、私の胃が空腹のサインを知らせる。
「こういう時もお腹が減るなんてね」
ため息をつきながら冷蔵庫を空けるが、見事に空っぽ。
「内定祝いに出前いっぱい取ろう〜!」と先走った考えをして、普段の買い物をサボった自分が、本当に情けなかった。
最初のコメントを投稿しよう!