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出来上がったのは、この店の雰囲気には似つかわしくない野菜炒め。
「これは……」
「俺の、唯一の自慢料理だ」
「喫茶店をやるのに?これしか作れないんですか?」
「自慢料理と作れる料理がイコールとは限らないだろ、まあ食ってみ、うまいから」
あまりにも押しが強いので、まず一口ぱくり。止めようと思った箸が、勝手に二口目と進む。
「どうだ?」
「……まあまあ」
「態度に出てるぞ」
「お客様に言うセリフ?」
「ははは、金払ってくれる?」
「勝手に飲ませて食べさせて、それで金とるってどこの悪徳業者ですか、訴えますよ」
「冗談冗談。ワンピースのお詫びだから、全部サービス」
そう言うと、男はまた私の隣に座る。
「なんで、さっきから私の隣に座るんですか?」
「今そう言う時代でしょ」
そう言われてしまうと、否定はできない。
けれど、ただでさえ男性が至近距離にいる経験が短い私にとっては、なかなかの苦行の時間。心臓の音が相手に聞かれでもしたら、舌を噛み切りたい。
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