前を向いて

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高梨桃花の心は疑心に溢れていた。 彼氏である小野智昭のことについてだ。 2人は同じ会社に勤めている同期だ。 一年前、桃花の方からアプローチをかけ、智昭と交際することになった。 しかし、最近の智昭は桃花に対して素っ気ない態度をとることが多くなり、同じ会社の女の子達といる時間が多くなったように桃花は感じている。実際、智昭の態度は大して変わってはいない。もともとメールの返信は適当だし、食事にいっても割り勘がデフォ、よく女の子にも話しかけていた。 なぜ桃花がそんな男にアプローチをかけたのかと言うと、ただの気まぐれである。 今まで桃花は自分をお嬢様扱いしてくれる男が好みでそのような男とばかり付き合っていた。しかし、たまには別の男をと、好みと正反対といってもいい智昭にアタックした。 最初は思った通りこの男はダメだと思ったが、だんだんその自然体の姿に惚れていき、本気で智昭に恋するようになった。 しかし最近、桃花はプロジェクトリーダーに抜擢され、仕事が忙しくなっていた。肌はあれ、目にはクマが目立つようになった。 最近は毎日家の鏡を見てため息をついている。 友達にも「あんた最近、肌荒れてるんじゃないの」 と言われるようになった。 「私、どうしたんだろ。」 桃花は顔を触りながら鏡をのぞいた。
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