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 こりゃもう腐れ縁だわ。そう思ったのは、大学に入ったとき。共通科目の講義で近くの席に座ってる君を見つけた。高校の人間関係が鬱陶しくて折角地元を離れた大学を受けたのに、君はちゃっかりそこにいやがったんだ。  それから、何となく話しかけて、君も気のない返事をして。その頃私は、君が嘘つきなんて可愛いもんじゃなく、とてつもなくめんどくさい天邪鬼なんだって痛感した。 「昼ご飯、食べる?」 「食べない」  そう言いながら、鞄からコンビニのおにぎりを出して食べ始める、厄介な奴だった。食べてるじゃんって私が言うと、これは間食とか言い出しやがった。正午に食べるおにぎりは、間食なんかじゃない。  そんな君は、「かもしれない」をよく使った。「お腹が空いてるかもしれない」それはつまり、空いてないかもしれない。っていうことだから、実に都合のよい言葉だった。  お腹が空いてるのに、素直に空いてるって言えない君は、「学食にいくかもしれない」って言った。そのくせ、食堂前のイチョウの木の下に、君が待ち合わせ通りにこなかったことなんて、一度もなかった。なんて面倒な奴って呆れながら、私もよくつきあったと思う。  そんな君に、もちろん友達なんかができるわけなく。可哀想な奴って思いながら、私は授業のノートやプリントの交換をよくやった。私も君も、適度に不真面目だったから、お互いに被っている授業があれば、どちらかがサボって、どちらかが出席表を二人分提出するっていう悪事も働いた。共犯者がいる悪いことは、罪が半分こされる気がするのか、なんだか清々しく気持ちがよかった。
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