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「それはテレビの中だけの話だ。お前の目は赤外線スコープか? ドアノブ見て指紋が分かるか?」
「いえ、それは……」
「そういう事は専門家に任せておけ。俺たちには俺たちの仕事がある」
「犯人逮捕ですか!」
「もう身柄確保したそうだ」
「え〜!」
やる気満々で現場に臨んだが、想像していた世界とのギャップに真実は落胆の色を隠せない。
「さあ、行くぞ。調査の邪魔になる」
「はい……」
現場となったアパートの部屋から出ると、真実はヘアキャップの中にまるめられていた長い黒髪を解放し、撫で付け整えた。
外は気持ち良い風が吹いていた。ドア1枚隔てただけで全く違う世界が広がる。同じ女として被害者の無念を晴らしてあげなければと真実は使命感に燃えていた。だがもう犯人が逮捕されたと聞いて少々気が抜けてしまった。
「今日は河合ちゃんの初めての事件だから特別に現場に入れてもらったが、次からは資料だけだからな」
「え? そうなんですか?」
「警察ってのは完全分業制だ。科学的に調べる係、体を使って調べる係に分かれてるんだ。自分の仕事に集中して他の係の仕事の邪魔をしないようにするんだぞ」
「はい……」
テレビドラマに憧れて警察に入った真実だったが、現実とのギャップにがっかりした。
「さあ、俺たちの仕事をしに行くぞ」
「私たちの仕事?」
「ああ。容疑者の家へ行く」
「ガサ入れですか?」
「そうだ。捜査資料良く読んどけよ」
「はい!」
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