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夕方、菜々子は近所のスーパーで夕飯の材料を選んでいた。普通の主婦の普通の日常だった。レジには長い列が出来ていた。いつになったら自分の番が来るのだろうと、ひとつため息をついた。
その時菜々子の携帯が震えた。今ここで出るのははばかられる。かといってせっかく並んだ列から外れるのはもっと嫌だ。
誰からの電話だろうかとチラリと確認した。隣の奥さんからだった。隣の奥さんは菜々子の母親くらいの年齢で色々と世話を焼いてくる。噂話好きで良く話し掛けてくるが好きでは無い。菜々子は無視する事にした。
ようやく会計を済ませ重い荷物を提げて菜々子は店を出た。自転車のカゴに荷物を乗せ、なんとかバランスを取りながらペダルを漕いだ。
5分後には家が見える所まで来た。見ると家の前に車が2台停められている。人の家の前に車を停めるなんてと不愉快になった。文句でも言ってやろうかと家に近付くと、玄関前に6人の怪しい男たちが立っていた。男たちに混ざり笑顔で話しているのは隣の奥さんだった。奥さんは私に気が付くと大げさに手を振った。
「奥さん、大変ですよ〜。警察ですって。ええ、あの方が真壁さんの奥さんですよ。奥さん、早く早く〜」
好奇心で目を輝かせ、隣の奥さんは喜々として手を振っていた。
「すいません。真壁さんですか? 真壁洋一さんの奥さんですか?」
男は菜々子にパスケースのような物を示した。そこにはその男の写真とワッペンのような物が貼り付けられていた。テレビのサスペンスで良く見る『警察手帳』と言う物だとすぐに分かった。が、それが本物かどうかなど分かるはずも無かった。
「警察の人……ですか?」
「はい。見えませんか?」
「はい、全く」
男は苦笑いしながら1枚の紙を菜々子に見せた。
「家宅捜索令状です。これから家の中を調べさせてもらいます」
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