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いきなりそんな事を言われ困惑する菜々子だったが、隣の奥さんの好奇な目が気になった。
「警察の方が見えたんで奥さんは買い物に行っていて今留守ですって教えてあげたの。で、私が奥さんに連絡しますって言って携帯に電話掛けたんだけど奥さん出なくて。あと少し遅かったらドア壊されてたわよ。私が必死で止めてたのよ」
恩着せがましい物言いが癪に障った。しかしドアを壊してまで家に入りたがるとはどういう事なのだ。そこで改めて菜々子は令状を見た。
「殺人……容疑……?」
呆然と立ち尽くしている菜々子に刑事は解錠を促した。言われるままに菜々子が鍵を開けるとすぐさま6人の刑事が家の中になだれ込んだ。
閉まるドアの向こうには嬉しそうな顔をした隣の奥さんがいた。
「ではこれから捜索を開始します。奥さん、旦那さんが昨日着ていた服はどこですか?」
菜々子は無言で窓の外を指差した。そこには洗濯されたワイシャツや下着類が風に揺れていた。
「奥さん、旦那さんが昨日していたネクタイはどこですか?」
ネクタイは干されていなかった。
「タンスかしら……。それとも……」
刑事たちはあちこちを物色し始め、真壁の洋服ダンスの場所などを聞いてきた。
「あ、あの、ちょっと待って下さい。これは一体どういう事なんですか? 何でこんな事されなくてはいけないんですか?」
菜々子の問に刑事たちは一瞬作業を停止し顔を見合わせた。そして園田が菜々子の前に進み出て遠慮がちに話し始めた。
「旦那さん、真壁洋一さんは今警察で勾留されています」
「は?」
「まだ容疑者としてですがね。奥さん、相楽早織と言う女性はご存知ですか?」
菜々子は少し考えた。
「誰ですかその人は」
「えーっと、どうも旦那さんの彼女らしいんですが。お気付きでは無かったですか?」
「はあ? 彼女? …………で、その人が何だって言うんですか? その人と主人が勾留されてるのと関係あるんですか?」
「実はその相楽さんが今朝遺体で発見されましてね。昨夜一緒にいた洋一さんが今疑われている訳なんです」
菜々子は動揺して何も言えなかった。ただ黙って上着の裾を握りしめていた。
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