私の少女

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私の少女

続いては、また韓サスから少し変わった一本をオススメ。 この映画。 ワタシも正直、途中までは普通のヒューマンドラマだと思って観ていたんですが。 内容は意外とサスペンスだった、と言う。 期待してなかったので、ちょっと得をした気分になった作品ですね。 ただし、中盤くらいまで非常にダルい、ちょっと間延びが気になる作品です。 この映画、正直オススメするのを迷った作品ですね。 何と言うか、上手く説明するのが難しい作品です。 内容自体はシンプルで、同性愛者である女性が主人公の物語。 彼女はある日、虐待された少女を助けるのですが……と言うストーリーなんですが。 そのまま恋が芽生える、と言うストーリーなら良かったのですが。 そうそう簡単には行かず。 異性愛者(ヘテロ)の人もそうだろうけど、恋愛対象が女性という主人公とは言え、オンナなら誰でもOKという訳ではありません。 特に相手は、未成年の幼い少女です。 主人公は痛々しい生傷のある、家族に暴力を振るわれながら毎日暮らしている。 そんな少女を恋愛対象ではなく、妹を気遣うお姉ちゃん(オンニ)のような目で見ています。 しかし少女は違って、まるで都会から来たカッコいい白馬の王子さまのように、同性である主人公に恋愛感情を抱きます。 この時点で、少女もまたビアンなのでしょう。 普通は助けて貰った、かなり歳上の同性女性に恋愛感情までは持たない筈です。 まだ人間関係も学んでいる最中な幼い少女は、大好きな主人公から愛されようと、なりふり構わずの猛アピールしまくります。 一緒にお風呂をせがんだり、べったり纏わりつき、主人公の元カノには嫉妬心むき出しで噛み付き、周囲の人間にはあたかも2人が恋愛関係にあるような風を装って、ただでさえ色々と肩身が狭い主人公を散々振り回します。 この少女、小さいのに悪魔みたいな計算オンナやな、嫌なヤツ、と思った方もいらっしゃるようですが。 なんかこの少女のアピールが、もう本当、観てるのが辛くなってくるほどリアルなんですよ。 ものすごく子供っぽいんだけど。 昔「Bバージン」という青年漫画に出て来た「懐 飛び込み女」というのがあって。 なんか、それを思い出してしまったわ。 考えてみたら、ああいうシチュエーションでは同性愛者、異性愛者に限らず。 どう頑張っても自分は恋愛対象として見てもらえない、それでも手が届かない月を欲しがる駄々っ子みたいに、どうしても諦めきれずにただジタバタと足掻いてしまう。 もっと努力すれば、何とかならんかなと。 結果、どんどん泥沼化してしまう。 誰もがみんな、一度はこんな事を経験して大人になったんじゃないだろうか。 某議員の、マイノリティーへの暴言が、一時期炎上して話題になったが。 一括りにした、ビアンって一体どんな人? 日本人って、どんな人? 韓国人は? 中国人は? 若い人ってどんな人? 年寄りってどんな人? そんな事、言われても困る。 一括りにすんなよ、と思う。 人間は記号じゃねーんだよ。生きてんだよ。 みんなそれぞれ一人づつ違うし、みんな大体は普通の人だし、勝手にくくんなし。 そう思う。 元カノが会いに来たり、のどかなど田舎でゆっくり時間が過ぎていく感じ。 作中で、ものすごく普通の人達がいて、普通に日々が流れていくのを観ながらそう感じた。 この映画では。 ビアンの少女が、ごく普通に子供っぽい恋をして、ちょっと普通じゃないエキセントリックな振る舞いで大人達を振り回す。 ただそんな映画だけど、なんだかこういう「人間」を描き出す韓国映画って凄いと思う。 中国人への強烈な差別を扱った「鰻の男」とか、このレビュー前出ですが、普通に生きているだけなのに人権すら剥奪されかねない弱者達の痛みを扱った「女は冷たい嘘をつく」、封建的イデオロギーに対する批判を扱った「スウィング・キッズ」とかね。 こういう生々しくメッセージ性の強いシナリオを、説教くさい道徳の教科書みたいではなく、サラッとエンタメに落とし込める。 そんな鮮やかな手腕も、韓サスの魅力の一つではないかなと思います。 ※※※※※ ストーリーは。 同性愛者というだけで、能力も地位も高かったのに、都会の警察署から田舎の駐在署の署長として飛ばされた女性の主人公。 彼女は自分の管区内で、父親と祖母から虐待を受けている少女と知り合います。 放置されボロボロで、生傷の絶えない少女。 見捨てて置けないと感じた主人公は、短い間でしたが少女を自分の家に匿い助けます。 駐在署の署長職で仕事の一環とは言え、匿い続けるのはさすがに行き過ぎなので、数日だけ滞在したら家に帰るよう少女に促しますが。 主人公を慕う少女は、何かと理由をつけて頻繁に彼女に会いに来ます。 主人公は折しも恋人と別れたばかりで、更に自分が同性愛者だから降格され移動になった事が部下や管区の人達にバレ。 そんな鬱々とした日々を、深酒でやり過ごすような生活をしていた所に、職権を利用して未成年の少女に手を出したのではと疑われる始末。 それでも、機能不全で暴力の絶えない、この少女の劣悪な家庭環境を何とか出来ないかと、主人公は少女の父親に訴えかけるのですが……。 と言うストーリー。 ちなみに、年若い田舎署長に着任した主人公を演じた女優さま。 美しいですが何処か疲れ切った、あの「……やれやれ」な感と言うか、本当上手いですよね。 なんか、お疲れ様です、と声を掛けたくなりました。 そしてショートカット、可愛いですよね。 あと少女役の子役ちゃんも、演技上手かったし可愛いかったです。 百合展開が嫌な人は閲覧注意ですが。 「私の少女」 是非、一度観てみて下さいね。 2020.10.21
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