空海 KU-KAI─美しき王妃の謎─

1/1
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ

空海 KU-KAI─美しき王妃の謎─

続いてはこちらも有名になりました。 日本と中国の合作映画。 なんかオススメさせて頂くと、センタどうしたよ? オマエこっち系に行くんかい。 と言われそうですね。 かなりCMが流れており、予告編をご覧になった方も多いと思います。 公開前にはミステリーとして宣伝されていたものの、実際は謎解き要素はほぼ無く。 若手な性格俳優の染谷さまが主演で、純な大河ドラマでもなく。 怪談調ですが怖くないという。 ホラー風味のサスペンス映画になります。 ワタシもちょっと騙された感がありましたが、宣伝の仕方を変えたら結果は違っていたのではないか……と言う地味な興行になった映画。 ちなみにどうもタイトル見て、真面目な仏教徒さんが空海法師のドキュメント映画かと勘違いして観に来た方も居たらしい。 一応、仏教徒なワタシですがまあ普通にアリでしたが……ドキュメントとして見ろと言われたら流石にキツイわね。 ヒド過ぎる。可愛そうに。 いや、だってアレは予告詐欺です。 歴史は動かないし、阿部寛氏はストーリーに殆ど絡まないし、壮大な大河ドラマでは勿論無いし、謎解き要素は一切無く出っからモロに怪談調だし、もっと言うと原作は他でも無いオカルトファンタジーに強い夢枕獏さまだし、主役も若き天才の空海(染谷さま)ではなく一匹の猫たんである。 予告編観た人は怒るよ、絶対。 ……はあはあ。 たかが数十秒の予告編に、思い切りツッコんじまったわ。いけないわ。 しかし日本映画、サスペンスジャンル映画に親でも殺されたんかい! とツッコミたくなる。 それほどまでに、サスペンス映画って蛇蝎のごとく嫌われているのね。 ちょっとでもサスペンス臭を出すと、観客は脱兎の如く逃げると思われてるのかな。 普通に幻想サスペンスホラー、と宣伝しとけばツボに刺さる人はかなり居たと思う。 夢枕さま効果もあるだろうしさ。 なんで言うかといえば。 個人的にはワタシの大好物な映画でした。 めちゃくちゃ好きなんです、この映画。 だからこそ、あの興行主のアレはちょっと許せない感じなのです。 まず染谷さまが良い。素晴らしい。 この映画って、実は空海が主役ではなく一匹の黒猫妖怪が主人公なのですが。 染谷さまは全編で重要なアイキャッチ役を担いつつ、しっかりと主役を立ててくる、素晴らしい助演魂を披露されていました。 変な人が演じると、こういう特殊な主人公は陳腐なブラックジョークになるところを、染谷さまの存在感がキチンと重しになっていて、リアルさを失わない。 ちなみに観て頂くと分かる、合作とはいえ非常に中国映画らしい中国映画である。 ここに溶け込むのも難しかったのではと思う。 驚くほどバランス感覚の良い、職人役者さまなんだなあと感心しました。 なんか「寄生獣」での、ミギーとの共演を思い出しましたね。 あの時も片方がえらい特殊なダブル主人公でしたが、あれと立派に共演を成し遂げたバランス感覚が良い方と言う印象が今回も炸裂していますね。 映像は華流の強みを生かした、絢爛豪華、絵画のように幻想的。 華圏らしい淡々と流れる時系の清冽。 背景に流れる、アジアンホラーな空気感。 それに加えて、シナリオも非常に良いです。 浪花節的な日本人の、心理描写も細やか。 こちらも奇跡のマリアージュですね。 相性が良い、と言うよりも。 日本映画が遅れており、古い興業から抜け出せていないんじゃないかと思います。 ※※※※※※ ストーリーは。 遣唐使が派遣されていた時代。 とある高貴な女性の元に、一匹の黒猫が現れます。 その猫は人語を話し、女性に魚をたくさん要求して来ます。 最初は恐れていた女性も、次第に可愛らしい猫の来訪を待つようになりました。 一方。 辛い船旅で、やっとの思いで中国に辿りついた若き天才の空海。 空海は滞在中に世話になっている詩人の男から、ある日、宮廷の人間が恐ろしい妖怪絡みで死んだ言う話を聞きます。 書士はその話を、宮廷に出入りする芸妓の女性の噂話で聞いたとのこと。 若くて好奇心が旺盛、洒落の分かる男だった空海は、その怪異を調べると言い。 僧侶でありながら、芸妓の女性が働いている店へと詩人と一緒に客として出向きます。 どうやら件の宮廷の人間は、人語を話す一匹の黒猫に襲われて亡くなったとのこと。 怪異のあった場所には、猫の歩き回った痕跡が残っていました。 誰かが非常に強い怨みを持っていて、化け猫がその復讐をしている。 続く黒猫の怪異を調べる空海でしたが、過去に亡くなった絶世の美女、楊貴妃にたどり着き、意外な事実が判明して……。 と言うストーリー。 歴史物ミステリーでは、と思って視聴を手控えていた方なら是非ご視聴して頂いて損はない、非常に良質な幻想サスペンスホラー。 予告編は詐欺ですが、物語は秀逸です。 ネタバレしそうで言わないですが、ラストは圧巻の映像美。 ある人の想いが、更に映像を彩ります。 いいなあ、本当あのシーン。素敵です。 私的にはツボなんだよな。 全編でしっかりとした推進力があり、ああいう深い人間ドラマが混じった映像の美しい映画。 驚くようなツイストがあれば良かったですが、そこまで贅沢を言わずとも素敵な作品です。 【空海 美しき王妃の謎】 ああいう映画、また出会いたいものです。 オススメがあれば、教えて頂けたら喜びます。 ── しかし【深紅】もそうだけど、日本でサスペンスジャンルは、小説も映画もゴリゴリ強制的にミステリーに変更されるよなぁ。 小説を書く人なら苦労は分かると思うけど、添削どころか、途中からのそもそもジャンル変更なんて正直オニですよ。 苦労したプロットが、全部ブッ壊れますし。 サスペンスファンと、ミステリーファン。 それぞれに別ラインで生息してますからね。 観客さまだって、こんな状況なら混乱します。 興行主さまだって、ひどいレビューとか口コミが広がっちゃうと取りっぱぐれ。 結果、誰も幸せになんないと思うんだけど。 2020.10.20
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!