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或る日、何か途轍もなく孤独感と疎外感と虚無感に襲われた私は、家に籠っていることに耐えられず無性に雨に打たれたくなると、エナメルのレインコートを着てエナメルのレインハットを被ってエナメルのレインブーツを履いて外へ出た。
雨に打たれていると、気分が落ち着く。安心して彷徨っていられる。でも街中で人の間を縫って歩いていると、如何にも私って異質だと感じる。徒でさえドロップアウトしてるのに傘もささずにこんな艶々した純白の私みたいな格好の人いないもの。とは言えショーウィンドウに映る私の姿、洒落てるじゃない。水たまりの幾つもの波紋、素敵じゃない。雨に濡れるメタセコイヤの紅葉した並木道、秋の醍醐味じゃない。そんな諸々の風物を詩的に映像として心に描きながら公園に来てベンチに座る。雨靄に包まれながら色んなことを思い返している内にうとうとし出す。すると、幾許もなく銀河鉄道の機関車のように何処からどうやって入って来たものか突如として轟音と共に車が私の目の前に現れた。それはウェッジシェイプの利いた楔形のとても車高が低くて鋭角的で前衛的な格好をしていて、その中から男の人が現れて言った。
「僕と山道をドライブしませんか?」
何なのこの人?私は狐につままれた思いがして雨でしとどになった男の顔を見つめた。それから頭の先から爪先まで見ようとしたら雨で靄っている所為かと思いきや確かに足がないことに気づくいて私はぶるぶると震え上がった。
「僕はアレッサンドロ・ザナルディです!」
「はぁ?」
「さあ、助手席に乗ってください!」
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