雨に打たれながら

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 お元気ですか?お変わりないですか?暑くなりましたね、寒くなりましたね、ご自愛ください、そんな類の人を思いやる意味を含んだ挨拶を儀礼的にしていながら然も心が籠っているかのように装ってする。而も罪悪感も羞恥心も持つことなく平気でやってのけるのだ。そういう人たちを見るにつけ私は嫌気が差す。道義心が足りない、感受性が鈍い、口先だけ、お座なり、偽善、嘘つき、親切ごかしなぞと思うから。しかし、私が唾棄すべきことを彼らは日常の一つの当り前のこととして何の抵抗もなくする。それに対し私が不快になり憤りを覚えるまでになるのは倫理的に潔癖という意味で癇性だからだ。  当然、私は人と挨拶するのを成る丈、避けようとする。接したくない、顔を合わせたくない。そう、何を隠そう私は人間嫌い。癇性であることが仇になるのだ。でも私、何故だか雨の日はいい出会いが生まれそうな気がする。そんな映画のワンシーンを観て憧れているのかもしれない。或いは私同様メランコリックでセンチメンタルな人に会える気がするからかもしれない。だから雨の日は漫ろに当てもなく歩き回ることがある。
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