junior high school days 1

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 それまで以上に、僕は神経質になった。    クリスマスの話題が出れば、嫌いな色を連想して苛立ち。  町のイルミネーションを見れば、その煌めきを恨めしいとさえ思い。  賑やかな級友たちは、桜を囲んで、僕を除外する存在。  桜を喜ばせる全てのものは、僕にとっての敵だった。  降り積もる負の感情は、悪循環を引き起こして、僕の思考を後ろ向きに引っ張った。  桜に対する些細な疑問が、不信感へと色を変えて。  事務仕事のように繰り返した拒絶にも迷いが生じた。  そして、それが(あら)わになったのは、終業式の数日前。 「夏臥師君、これから帰り?」  雪降る帰途、グレーのキャスケットに白い粉雪を纏いつつ、独り下校する僕に、桜はいつもどおり愛想良く話し掛けた。 「はい、そうで──」  機械的な返答のために振り返った僕の目に映ったのは、桜のコートに付着した、幾つもの雪玉の跡。  明らかに雪合戦の痕跡と分かるそれを見た瞬間、僕の中で(くすぶ)っていた何かが一気に爆発した。  何故、自分に声を掛ける。  何故、楽しい他の級友との遊びを中断してまで、自分の後を追ってきたのか。  疑心暗鬼になり。  笑顔の桜の、読めない本心に、言い知れない畏れを覚えて。    気付けば僕は力一杯、桜を睨んでいた。 「もう僕に構わないでください! 苦痛、なんです!」    初対面の時の、冷たい拒絶とは明らかに異なる、感情の吐露だった。  声を荒げたことで、僕は漸く思い至った。  比較をして、自分との差異を探してしまう程に、自分が桜との共通項を求めていたことに。  桜が自分に構う理由が不明瞭であることが、苛立ちを募らせる最大の原因であったことに。  海風の冷たい日だった。  その時の潮の香りと、頬に当たる風の冷たさは、鉛のように僕の中に沈殿して、いつまでも、いつまでも、心の奥に残り続けた。
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