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「演技が下手くそなんだよ、雑魚が。この目を欺けると思うなよ、クソアマ」
「口が悪い……酷い、私のことそんなに嫌い? 私、まだ何もしてないのに……」
「あぁ? 被害者ビジネスでもおっ始めたのかァ? 『そうですそうです、このわたくしこそ加害者様です、他人の心も読めないサイコパスで御座います』、ってかァ?」
少女は片手に《霊能者》のカードを握り締めている。暗闇に包まれた廊下に、二人の人影がぽかんと浮いていた。
「それにしても、貴女ってこの子のことが好きだったはずなんだけどなァ。どうしてそんなに悪意混じりなわけ? 私なーんにも悪いことしてないよ?」
「へぇ、随分と自意識過剰なお嬢様なんだね。自己愛剥き出しって感じ? まぁ、予想通りだよね、そういうとこつまんないよ」
「だーかーらー! どうしてそうも敵意満点なの? やりにくくって仕方無いんだけど!」
「敵意じゃないよ。アンタだって、目の前に歩いてる蟻に優しくする?」
「……私、蟻じゃないしー。っていうか、蟻だと思われてる? 何で? っていうか、何で私にこうやって初日から突っかかるの?」
《霊能者》のカードに口づけをすると、黒を包み込んだ少女はウインクをした。それを、二つの好奇の目が、影からじっと見つめているのに、少女は気付かない。
「さぁ? そんなこと、アンタらみたいな雑魚が知れるわけ無いじゃん、かっわいそぉ」
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