【エブリスタ1000スター感謝SS】戦地にて

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 四人の少女が二つのベッドだけでいっぱいの狭い部屋で、窓から差し込む月明かりの下、寝転がりながら話をしている。その部屋が単なる部屋と呼ぶべきか憚られるのは、部屋のドアが施錠されていて彼女らが自力で出ることが出来ない所だった。  彼女らが今日の仕事から帰ると、脱走しないように人質にされていた別の部屋の少年少女達が、新しい仕事に出かけていくのだ。 「てかさ、サザもあの剣士を手当てしようなんて、依頼に無いこと急に言い出すんだから。危うく見つかるとこだったよ」 「ごめん、アンゼリカ。でも、あのイスパハルの剣士の人は少し手当てしたら生き延びられそうだったからさ。私達が住んでるのはカーモスだけど、この戦争はイスパハルに勝ってもらわないと私達にはもう未来がないもの」 サザと呼ばれた少女は憂いを帯びた口調で言うと、背の高く長い髪の少女が続けた。 「アンゼリカはそう荒れるなよ。サザの言う通りだ。それに、アンゼリカが一番率先して手当てしていたのを私はちゃんと見てたぞ。しかもあの故郷から持ってきてた珍しい薬草、ちゃんと使ってくれたじゃないか」 「そうだよ。それに、アンゼリカおねーちゃんが好きそうなイケメンだったよ? 暗かったから顔はちゃんと見えなかったけど、黒髪に黒目が素敵な感じの人だった!」   ぐりぐりの黒い巻き毛の少女が金髪のお下げの少女の顔を覗き込んでにこにこしながら言った。巻き毛の少女だけは、他の三人の少女より何歳か幼そうだ。 「面食いのアンゼリカならイスパハルの美男子を一人救ったと思えば良い気になれるだろ」 「……それ、カズラは褒めてんの? けなしてんの?」 「もちろん褒めてるよね? カズラ?」 「ああサザ。勿論だ」 「ふーん……」  金髪のお下げ髪の少女は不服そうに頬を膨らませたが、それ以上は何も言わなかった。
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