6.結婚相手

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6.結婚相手

 サザが乗っていた馬車の中に、土で汚れた顔の青年が顔を出した。 「ど、どうも……」 「疲れたか? 案外遠かっただろ」  青年はそう言いながらこちらに手を伸ばした。  サザは戸惑いつつ、差し伸べられた手を取ると、青年は馬車から降りるのを手助けしてくれた。    短い黒髪に黒目の青年は、サザより二、三才位年上に見える。  馬車から降りて分かったがかなりの長身で、小柄なサザが見上げる位の身長差だ。  整った顔立ちはどちらかと言うと女性的で柔和な雰囲気がある。目を見張るような美青年という訳では無いが、優しそうな瞳が印象的だ。  青年は動きやすそうな綿のシャツとズボンを着ていて、どうやら農作業をしていたらしく顔だけでなく体も土まみれだ。  しかも、青年の体からはひどい匂いがする。サザは思わず顔をしかめた。 「匂うか? ごめんな。今日は堆肥を撒くのを手伝ってたんだ。あそこの畑で」 「は、はあ」  
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