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青年が指差した方に、少し離れた畑の脇で農機具の片付けをしている人達が見える。
もしや、このすごく農家っぽい感じの人がユタカ・アトレイドなのか?という考えがサザの頭の中に浮かんだが、すぐに打ち消した。
服が完全に平民だし、何より、この人は帯剣していない。国一の剣士が外で丸腰はないだろう。
(とりあえず、この人ではないな。近所の世話好きな人かな?)
「領主さまー!今日はありがとー!」
畑で農機具を片付けていた市民たちが、手を振りながらこちらに向かって叫んだ。
「またなー!」
隣にいる黒髪の青年が手を振り返している。
「えっ」
(じゃあやっぱり、この人が……?)
困惑しているサザの様子に気がついた青年はサザの方に向き直った。
「おれがイーサの領主、ユタカ・アトレイドだよ」
サザは慌てて頭を下げた。
「私はサザ・アールトです。
あの……剣士様とお聞きしましたが、剣は……?」
「農作業するのに邪魔だから置いてきた。みんな怖がるしな」
「そうですか……」
サザは戸惑いを隠せなかったが、ユタカは気にしない様子でサザの手を取り、一緒に城の中へ歩き出した。
(なんか、思ってたのと違うな……)
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