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7.ローラの心配
「まあ、領主様‼︎ なんて格好をされてるんですか⁉︎」
年配のメイドが城の広間に入ってきたユタカに向かって叫んだ。
五十過ぎくらいだろうか。恰幅の良さがベテランの雰囲気を醸し出している。シミひとつ無い白のメイド服で、鳶色の髪をきっちりと後ろに纏めている。
「ローラ、仕方ないだろ。畑仕事手伝ってたんだ」
「そんなことは見れば分かります!
今日は奥様をお迎えになる大切な日だというのに……何人も連続でお断りしているからって、忘れないで下さいよ。それにもう五十人目ですよ!
また帰られてしまうではないですか!
さすがにそろそろお決めになって下さい。そして、ちゃんとした服をお召しになって下さい!」
(五十人目……? そして、領主ともあろう人がメイドに怒られている……)
サザはユタカとローラと呼ばれたメイドのやりとりに、この人が一般的な領主像とはだいぶ様子が違いそうだと改めて感じた。
「ちょうど今来てくれたよ。サザだよ」
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