204人が本棚に入れています
本棚に追加
「二つ目なんだけど、さっき言ったようにイーサは復興の最中だから、領主夫人であってもちゃんと働いてもらうよ。
イーサの人々が散々苦労しているのに上の人間が悠々と暮らす訳にいかないからな。
だから、普通の領主夫人みたいに、洋裁や料理の手習いとか、近所の貴族の娘とおしゃべりばかりするような生活を望んでいるんだったら、それは無理だと思って欲しい。
ただ、領主夫人になってもらった以上は、相応の暮らしは絶対に保証する。
それに、働いてもらうと言っても、決して馬車馬のようにやれという訳じゃない。無理の無い範囲でだ」
サザはそもそも仕事が見つからなくて結婚したのだ。生活するためにならどんな仕事でもやる気だし、むしろ料理や手芸の練習の方が苦痛な気がする。
ユタカがサザに何をさせようとしているのか分からない不安はあるが、さすがに暗殺ではないだろうし、暮らしは保証すると言っている。
「ええ、それはご尤もです。もちろん働きます」
「……なら良かった。本当に。
さっきローラが言ってたの聞いたと思うけど。
本当は、サザの前に求婚状を送ってきた女性の中でかなりの人数に来てもらったんだけど、この話をしたら全員帰ってしまったからさ。みんな豪華な結婚式と領主夫人らしい生活は譲れないみたいでさ」
ユタカは少し皮肉るように眉間に皺を寄せて笑った。
「はは……まあ、貴族の方ならそういう人は多いでしょうね」
とりあえず帰されなさそうだ。サザも心の中で安堵のため息をついた。
最初のコメントを投稿しよう!