9.イスパハルの慣習

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9.イスパハルの慣習

「でもさ。本当にサザが来てくれて良かったよ」 ユタカは椅子に座った膝に両膝を投げ出すように置いて、相変わらず笑顔で言った。 「サザは、孤児なんだろ? おれもだからさ。  ありがたいことに結婚の申し込みはたくさんあったけど、申し込んでくれる人はみんな貴族や他国の王族の娘とか、とんでもなく身分の高い女性ばかりだったから。  結婚する決まりがあるのは仕方ないとして、おれとは絶対に釣り合わないだろうから、本当に困ってたんだ。  しかもカーモスからの難民で路上育ちなんだろ?  同じ孤児でも孤児院にいたおれより苦労してそうだから尊敬したし、この人とならやっていけそうだと思ったんだ」 「そ、そうですか……ありがとうございます」
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