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「でさ。それが、サザに頼みたい仕事にも関係してるんだ」
「仕事と孤児であることが、ですか? 私には何の特技も無いですが」
「詳しくは明日、領地を案内する時に説明するよ。その方が分かりやすいから」
「はあ……」
全く見当がつかないが、教えてもらうには明日までは待つしかなさそうだ。
「で、明日からの予定なんだけど。
明日はイーサを一通り案内して、その次の日に町の教会で結婚式を挙げる。
結婚式の後は、その一週間後におれと一緒に国王陛下に謁見してもらうことになってるよ」
「こ、国王陛下にですか……」
(めっんどくさ……)
結婚式だけでも気が重いのに、そんなものまであるとは。しかし、国王陛下が相手では断る訳にもいかない。
「謁見は形式的なものだから、不安がらなくていいよ。おれもいるし。陛下の前で『真実の誓い』を立てたら終わりだ」
「『真実の誓い』、ですか?」
「結婚するにあたり、陛下に対して欺瞞が無いことを誓うんだ。
サザはおれと結婚すると、おれが死んだら領主になることになる。領主は国の中でも大きい責任がある職務だから、一応、結婚の時に法的に有効な誓いを国王の前でとらせるんだ。
昔からの慣習に近い儀式だけどな」
「法的にというと、何か罰則があるのでしょうか」
「アスカ国王は法律で、国王との直接の誓いは最重要に扱うことを決めているから、もし嘘だったら死刑にはなるな」
「死刑!?」
驚愕して大きな声を上げたサザに、ユタカがなだめるように続けた。
「死刑と言っても、普通に領主夫人をしていれば絶対に違反しないよ。
それに、欺瞞のないことと引き換えに国王はおれたちを直接の庇護において守る誓いを立ててくれるんだ。そのメリットの方がずっと大きい。
それに、着いて早々にこんなこと言うべきじゃないけど、あくまで国王とサザの間の誓いだから、おれとの離婚や不貞を罰するものでもないし」
「そうですか……」
確かに普通の領主夫人ならまず違反しないだろうが、サザは普通ではないのだ。
今は暗殺者だとばれても後ろ指を刺されるだけで罪人にはならないで済むのに、この誓いをした後は死刑になってしまう。
イスパハルにこんな決まりがあるなんて知らなかった。知っていたらさすがにカズラとアンゼリカも躊躇しただろう。
(大変なことになっちゃったな……)
今更ながらナイフを持ってきたことを後悔しつつ、サザは考えた。
だが、今だって暗殺者であることはしっかり隠して生活できているのだ。普通にやっていればまずばれることはないだろう。
「ま、そんな感じで色々やることがあって悪いね。
一応夫婦にはなるけど、今はまだ完全に他人だからな。少しずつ慣れていきたいと思ってるよ。
宜しくな」
ユタカはそう言うと屈託のない笑顔を見せた。それにしてもよく笑う人だと思う。
「え、ええ。こちらこそ。ありがとうございます」
(ちょっと変わってるけど。悪い人じゃなさそうだ)
こんな優しそうな人に剣士が務まるのだろうかという疑問は残るが、サザは結婚に対しての不安が少しだけ和らいだ気がした。
「今日は疲れただろうから早く休んで。ローラに風呂の準備を頼むね」
「はい」
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