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風呂から上がったサザは、風呂桶の隣の籠に用意してあったドレスの様に豪奢なレースがついた白いネグリジェを見てぎょっとした。
(いかにも新婚初夜って感じだ……あ、そういえば)
サザはふと、ネグリジェの袖の長さを確認した。
普段、サザは身体の傷を隠すために首元のつまった長袖の服しか着ないのだが、このネグリジェは半袖だし、何より、背中が大きく開いている。
サーリはサザのことをよく分かってくれていたので、ちゃんと長袖のデザインのものを準備してくれたのだ。
(まずいなこれは)
これでは背中の傷が見えてしまう。噂話が好きそうなメイド達には知られない方がよさそうだ。できれば隠しておきたい。
「ローラ」
サザはドアの前で待っていてくれているローラ達に声をかけた。
「はい奥様、何でしょう?」
ドアの外からローラがすぐに返事をする。
「特に足りないものは無かったし、もう手伝いは必要なさそうだから、他の仕事に戻っていて」
「そ、そうですか……?」
「気にしないで。大丈夫です」
「そう仰るのであれば、そうさせていただきます。でも、何かあればいつでもお声掛けくださいね。お手伝いしますから」
「ええ、ありがとう」
何から何までよく分かっていないサザに対してもさすがの気遣いだ。こういう人達がプロのメイドなのだろうとサザはギルドの求人を思い出した。
サザは身体をタオルで拭き、ネグリジェを着てスリッパを履くと、ドア越しに周囲に耳をそばだてた。
近くには誰も居なそうだ。
そっとドアを開けて廊下に顔を出し、目視でも誰もいないことを確認すると、サザはスリッパをぱたぱたと鳴らして急いで寝室に戻った。
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